2012年05月22日

ひつまぶし備長 銀座店


『本店の味を落とさず邁進する拡大路線店』

長く人に愛される飲食店を営む秘訣を3つ挙げるとしたら
@儲けだけに走らない。
A支店をつくるなど拡大路線、多店舗展開をとらない。
B支払い価格に見合うだけの満足感を客に与える。
と考える。

この「ひつまぶし備長」、私の記憶では2001年に名古屋は小牧の国道沿いに本店を改装オープンさせた。私は新装開店時に行き、名古屋の「うな富士」には負けるが「蓬莱軒」より遙かに美味しいと感じた。なにより上記2店より安いのが嬉しかった。
当時は名古屋でも全くの無名、知名度の低い店であったのだが、この経営者はなかなかの野心家なのであろうか、それ以後10年の間に過度のマスコミ露出を繰り返しながら店舗を拡大していった。名古屋の中区栄に第一号の支店を出したのを皮切りに今では博多、銀座、池袋に支店がある。
なんと今年は東京スカイツリータウンソラマチに店をオープンするという。
そればかりかニューヨークも視野に入れているようだ。
こんな急激に拡大した店に旨い料理はないというのが私の論理だ。

最近私は、食ベログ・東京鰻1位、全国でも2位という関西風の鰻を売りにする池袋「かぶと」に行った。ある程度の期待をして行ったのだがその店は食べログでの高評価がまったく理解できない、やらせ疑惑が濃厚な鰻屋であった。やはり東京ではまともな関西風の鰻を食べるのは無理かなと思った。
「かぶと」での悪夢を一刻も早く消し去ってしまいたかったので多店舗展開店と知りつつも「ひつまぶし備長 銀座店」に行った次第である。

場所は銀座外堀通りに面したビルの12階。
18時の時点で客は誰もおらず当然窓際の席を案内された。
おぉー何と素晴らしい眺望だ!眼下に首都高、商用ビル、東京駅から有楽町駅前一帯を望む。
池袋の、やらせ疑惑店での酷い思い出が一気に吹き飛んだ。

「うざく」、「肝焼き」、「白焼き」を肴に日本酒ぬる燗から始める。

お酒.jpg


●「うざく」1,080円  


うざく.jpg



「うざく」なんて食べ物は焼いた鰻を細かく切ってキュウリの酢の物に混ぜれば出来上がる。しかし「うざく」をメニューに載せている店は少ない。そして珍しくメニューにある店ではこのくらいの値段設定を平気でしていてがっかりする。ここまで金出して食べるものじゃないと思うのだが、好きだからメニューに書いてあるといつも注文をしてしまう。
私の育った頃の関西では「うざく」をメニューに載せる店はなかった。「うざく」は何処の家庭でも気軽に食べている料理だから店では蒲焼きの添え物で少し付いて来る程度の物だった。
それが客からお金を頂くメニューになると、たいそうご立派な「うざく」が出てくるようになった。
私はある店で2,000円もする「うざく」を食べたことがあるのだが、何と熱々の蒲焼きが丸々1匹と、その脇にキュウリと茗荷の酢の物が添えられていた。鰻と酢の物を口の中で混ぜてお食べ下さいという意味だろう。これは私の中では「うざく」ではない。小鯵の南蛮漬けと称して揚げたての鯵と酢を別々に出してくるようなものである。(その方が美味しいかも知れないが)
備長の「うざく」もやはりキュウリの酢の物の上に鰻が乗っていた。私は乗っている鰻を箸で半分に切り、下のキュウリの酢の物と混ぜて本来の「うざく」の姿にして食べた。焼きたて熱々の鰻が出て来なかったのだけ幸いである。酢の物は冷たい物と昔から決まっている。 



●「肝焼き」880円


肝焼き.jpg


名古屋の「いば昇」も2串で880円だった。
この店は小鉢に入り量は実質的に「いば昇」の半分。
私には丁度よい甘さのタレだが、かなり甘いのでは好みは分かれるだろう。肝はほろ苦くてとても美味しい。
池袋「かぶと」のバカ親父(「バカ」を連発する親父)の「苦くない肝焼きは食べたことがないでしょう」という話が甦る。「捌いてすぐの肝を焼くと苦くない」と得意のセールストークをたれていたが、肝焼きはこの苦さが命なんだよ。日本酒がよく進む。



●「白焼き」2,750円


しらやき2.jpg

まず白焼き云々の前に、この値段で薬味に混ぜワサビはないだろう。
もともと本店は田舎の国道沿いの廉価店だったから混ぜワサビでも文句は言えないが、ここは銀座の12階。白醤油使って奇をてらう前に本ワサビを擦って使って貰いたいものだ。
肝心の鰻は餌切りのしっかりした臭みの無い鰻である。
しかも池袋「かぶと」の幼稚園児のような小さな鰻の後だと2倍の大きさに感じてしまう。
焼くときに味醂を塗って焼いたのであろう、鰻本体がかなり甘い。
私は好きだが鰻そのものの味で食べたいという人は好まない焼き方だ。



●「上ひつまぶし」3,980円


上ひつまぶし.jpg

上ひつまぶし2.jpg



これでも値段は下から2番目である。
さらに上には「特上ひつまぶし」、「極上」、「究極」と3種類あり、「極上」と「究極」はご飯の中にもう一段鰻入っている。
「究極」に至っては9,700円と誰がこんな物頼むのかと疑いたくなる値段である。
この「究極」は名古屋店には存在しないので、地代の高い銀座店で客の平均支払い単価を上へ誘導しようとしているのが見え見えのメニューだ。
客はメニューの真ん中の「特上ひつまぶし」5,800円を頼むとでも思っているのだろうか。江戸っ子はそんなにバカじゃないと思うけどなぁ。
「上ひつまぶし」3,980円だけは全国統一値段のようだ。確か本店ではこれで2段に鰻が入っていたように思う。
肝心の蒲焼きだがタレはサラッと系だがかなり甘め。私は好きだが東京の鰻屋にはない味だ。鰻は白焼きで確認済みでたいへん美味しい。ご飯も味のある美味しい米を使っている。


焼き場2.jpg
この店で使っている鰻も大きくはないが、醜店「かぶと」に比べたら1.5倍〜2倍の大きさ。


はたして銀座の12階で景色楽しみながら名古屋名物「ひつまぶし」を食べる客がいるものだろうかと一抹の不安を感じたが、やはり私が店を後にするまで一人の客も入ってはこなかった。
今月には東京スカイツリータウンソラマチに店がオープンする。同じフロアに浅草の鰻前川も店を出すので、名古屋で地道に店を経営しておいた方が良かったなんて結果にならないことを祈る。

【 総 括 】
●名古屋ではランチに豚カツも出す食べログ評価3.1の店。
●過度のマスコミ露出と拡大路線(九州で味噌カツ屋も展開)に活路を見いだしてきた店にしては鰻の味、質はまとも。
●眺望も値段の内だと考えられるなら銀座店は使える。
●鰻に限らずタレの甘さは名古屋の特徴だが江戸っ子に好かれるとは思えない。
●東京スカイツリータウンソラマチ店が命取りにならないことを祈る。

posted by ブディーノ at 20:03| Comment(0) | TrackBack(0) | うなぎ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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